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​      重心とアクロ

栃木県、茂木のアクロ大会に行った
 飛行機にしろグライダーにしろ設計図面頼りに重心位置を合わせるのが常識になっている。 設計図には最適重心位置が○印等で印されているが、この重心位置を変えるとどうなるのだろうか? 燃料タンクの位置が重心位置にあれば、満タンでも空でも関係ない事は理解できるのだが、実際は重心点より前方に設置されているので、 満タンと空では重心位置も違うだろう。  実機の旅客機の場合は空席の時最適重心点に設計したのかな?もしかして、旅客が少ない時は重心点の席に座らせるのか? それともコンピュータで自動的に分散配置した座席を指定し、重心を合わせてるのかな?なんて余計な事まで考えてしまう。

 RC飛行機の燃料タンクは普通、重心点より前方に位置している。 と云う事は満タンと空タンとでは重心位置が異なるはずである。でも、その程度の変化で飛行特性にさしたる影響も感じないので、 特別重心を気にすることなく設計図に従っていた。 ところが、栃木県の茂木(もてぎと読む)で開催された「実機のアクロ大会」を見て感化されたのがきっかけで、 重心問題とつきあう羽目になった。

 アクロ大会とはHONDAのサーキット上空で行われる「スホーイ」「エクストラ」「スカイウオーク」他の曲技飛行機が、 観客席から機体2~3機分位の距離(目測15m~20m)を飛行する。私は妻と娘夫婦で日帰りで行ってきたのであるが、 4人とも、初めて見たので10時から15時までスタンドの椅子に座ったまま、 佳麗な演技と青空に引かれる図太いスモークに見とれていた。 スタンド前の背面飛行では、「スホーイ」を操縦する「キャパニナ」さん(知らない人はクリックして、最初の宣伝が長いけど)の長い金髪が、 下になったキャノピーの天井に張りついているのもはっきり見える。 この迫力はモトクロスもカーレースも比較にならない。昼休みにラジコン飛行機のデモ飛行があったが、 どこで飛んでいるのか中々見つからず、 蚊か蝿程度にしか感じないので4人とも興ざめの感があった。妻などは、「一生懸命に見上げ、見つからないよ~」と、、、 娘が「下だ下だよ、、」と。

 実機の各種演技で色々と感心はしたのだが、感激度合いの高い順に記すると、
① 高度5m弱の極めて大きな角度(約30度)でのサイドスリップ直線飛行。何で斜め横向きになって飛べるの?
② 2機で並んで飛んで来た飛行機が同時に、「左向け左」とクッキンと水平方向に90度進路を変えた。(何て名前か知らない)90度方向を変えてそっちへそのまま進んで行く。何でバンクもせずにその場で進行方向を左に90度クッキンと変えられるの?
③ 斜めに上昇しながら90度ロールと同時に、テールが上方にはね上がっかと思うと、テールが機首を追い越して前方回転したり。どんな舵きってるのかな?
④ 垂直上昇し、昇りつめたところからテールから下がり始め、少し下がったなと思うと同時に「パッタン」と頭を下に向けるテールスライド。スタント機下は直ぐ頭下げになり、こうは出来ないのにどうして?
⑤ 機体を真横に立てたナイフエッジ飛行、RC飛行機では良くやってるが実機はやらなかった。けど、4ポイントロールはやってました。

 我がRC飛行場では①~③の演技をする人がいないので始めて見て感激である。どうやってんだろう?? と感心したり技を推測したり。 ④のテールスライドも私のスタント機ではやろうとしてもできなかったので、何故か?と思ったりして1日が終わった。 このアクロ大会、茂木で毎年11月に開催されるそうです。行く人のために大事なアドバイス、 「防寒着の準備お忘れなく、日が陰ったり、風が吹くと滅法寒い」よ。

1.浮力中心、揚力中心、重心の違い
 実機のアクロを見たのが運の尽き、アクロ飛行の原理位は解明してみたいと思い出した。 そう云えば昨年、発売されたヒロボーの「ホットリンボー」なる機体で購入直後にフラットスピンを試みたが、 どうやっても頭が下を向きうまくいかず放置してあったのを思いだした。手始めにフラットスピンから挑戦する事にした。 フラットスピンの操縦テクニックはRC雑誌にあるので省略するが、そのとうりやっても絶対にフラットスピンに入らない。 そこで操縦テクニックうんぬんする前に原理を検討することにした。 フラットスピンする機体を水平に落下(降下)させる為に必要な要素の検討。 飛行機に限らず木の葉でも同じ事で、水平姿勢を保ったまま大気中を垂直に降下する時に発生する抵抗中心(浮力中心)と、 木の葉の質量中心(重心)が完全に一致し、他に余計な力や乱流が無ければ、 頭を下げたりせずフラットのまま降下(落下)するはずである。

 ホットリンボーの浮力中心と機体の重心位置を合わせてみる事にしました。浮力中心=簡単に言えば機体の平面を想定し、 その平面を厚さ一定の紙(=紙密度分布が一定)と見たたてた重心を浮力中心(図1)と仮定します。 (本当は平面でないので少し違うが原理だよ) 機体は場所によりエンジンや電池などで密度分布が異なります。普通、機体の重心(図2)は浮力中心より前方に設定されています。 また翼型の話に出てくる揚力中心(図3)に対しても、重心は前になるように設計してあります。 いずれにしろ、重心を後ろにすれば浮力中心や揚力中心に近ずいていきます。 重心を後ろにずらすための調整は電池の搭載位置を後ろにしたり、 尾部に重りを付けたりします。でたらめ自作機体の場合それだけでは調整できず、首(機首)をつめたり、 伸ばしたりする事もあります。

 浮力中心?揚力中心?混同してるって?似てるけど違うんだな。 中学生の時「理科の本に翼型(クラークY)の絵があり、前進すると上面に流れる気流が速くなり揚力が発生する。」とあったが、 当時からそんなの嘘と思っていた。だって、平面の下敷きだって斜め上向けにすれば浮くし、 クラークYの飛行機だって背面飛行してる。 理科の本からすると背面飛行は不可能になるはずである。 とかく原理説明と云うのは、非常に限られた条件下での話なのだ。だから、次の説明で納得できない方は、更に自分で研究して欲しい。 難しい学術用語でなんと云うか知らないが、RCで使う程度だから簡単に説明する。 ここでは判り易くするため次の様に定義しよう。なお図は簡素化して示した。

(1)浮力中心(図1)
 前進速度零で大気に浮いている時に生じる浮力の中心。実際は機体姿勢が水平のままで、垂直に降下(落下)する時に受ける抵抗力の中心、機体から見れば真下からの上昇気流。

(2)揚力中心(図2)
 前に飛んでいる時に、翼により発生する大気が機体を持ち上げようとする揚力の中心。速度が零なら揚力も零だから浮かない。

(3)重心(図3)
 機体のエンジンや電池等を含む質量(重量)の中心を重心という。空中にある機体に外力がかかった時に重心を中心に回転異動する。1本の紐で機体を水平に吊り下げると延長線は重心点をとうる。

(4)普通の設定
 外乱に強く、操舵に対しても穏やかにするため揚力中心より重心を前になように設計してある。浮力若しくは揚力中心に紐を結んで吊り下げると機首が下がる。これを補うために水平尾翼を下に押し下げねばならない。高速飛行時には僅かなエレベータアップで常にバランスをとっている。故にそのまま背面飛行にすると降下してしまう。

2.重心を後ろに下げるとエレベータの効きが「ものすごく」良くなる
   ホットリンボーは低価格故に思い切りいじってみる事にしました。近くに適当な模型屋がないので飛行機用の重りが買えません。 田舎って不便です。でも釣り道具屋さんは近所ですので、釣り用の鉛の重り8g、15g、20g、100gを買ってきました。 手っ取り早くは尾部にこの重りを接着してしまえば良い訳です。当然機体は重くなりますがそれはどうでも良いのです。 重心と飛行特性の実験です。いきなり100g付けても良いのですが、滑走しても恐らく尻が上がる前に主翼が浮上がり、 そのままひっくり返えるような気がして止めました。で、安全のため、8g、16g、32gと増しながらテスト飛行です。 結論=ホットリンボーは最後尾に32g付けると完全なフラットスピンになります。重心をさらに下げると飛行機は上を向いて操縦困難となる。そんな時はエレベーターに大きなダウンをかけると救える場合もある。

(1)離陸~水平飛行まで
 重心を浮力中心近くに合わせて初飛行です。勢い良く滑走しエレベータを普通にアップに入れただけで急上昇にはいります。 (普通の重心ですと穏やかに上昇し、ニュートラルに戻せばほぼ水平飛行に戻るのに、)何と変更後の重心では急上昇を続けます。 仕方なくエレベータダウンに入れ水平に戻しに入ったのですが、今度はダウンのままどんどん降下します。 水平飛行に戻すのに何度か上下を繰り返した後に水平飛行になりました。 舵角を最大にした関係でニュートラルのでないサーボみたいな感じだな??!!

(2)減速~着陸まで
 ノーマルのホットリンボーはエンジンスローにするとかなり機速が落ちてきて降下するのでエレベータでつって来ます。 着陸直前では更にエレベータをアップに入れて着地してました。 これに対し変更後はエンジン最スローにしたのに、機速が落ちることなくスタント機の様にスーと滑空を続けています。 飛行場を行き過ぎそうなのでエレベータアップに入れると上昇すらします。重心位置を浮力中心に近づけると離陸、着陸、 水平飛行ともエレベータが大変良く効き慣れないと危険です。 また、重たい頭を持ち上げるためののバランス用エレベータアップ不要となり、滑空性能も向上する事が体感できました。 着陸前の距離が延び過ぎるので、エルロンを両方とも上に上げる操作「エアーブレーキ」も設定する事にしました。 これで、急角度の降下でも着陸進入する事も可能になります。

(3)フラットスピン
 ノーマルのホットリンボーでエルロンをこれ以上は機械的に行かないほど最大舵角にし、どんなに頑張っても 正面のフラットスピンには入りませんでした。が、変更後は綺麗なフラットスピンに入ります。 本当に水平になりくるくるとスピンを持続します。エンジン回転は1/3~1/4程度です。 1回転の落ちも少なく1m弱位かな?飽きるまで軽く15回以上のフラットスピンができます。 もしこの状態で、エンジンを全開にするとぶざまなスピンに入ります。

(4)ホバリング
 重心を後ろにずらした結果、垂直上昇に入りそのまま機速を零にして空中にとどまる「ホバリング」も簡単に出来るようになりました。 未舗装の林道でもでオンロードバイクしか持っていない人が、オフロードバイクに乗り換えた時の感触のようです。 「オフロードバイクは座布団に座っているような感じ」「急に操縦が上手くなった気がする」位の差です。 「なんだ、ホバリングってこんなに簡単にできるのか!!」と思った次第です。

(5)テールスライド
 ホバリング状態からスロットルを少し戻すと機体は垂直のまま降下しだします。更に、スロットルを戻せばテールから落ち始め、 同時に「パッタン」と頭を下に向けます。これもさほどの技は必要ありません。 スタント機で出来なかったテールスライドも難なくクリアーです。

(6)トルクロール
 ホバリングの持続は簡単に出来たので次はトルクロールです。 ホバリングで少し右に当てていたエルロンをニュートラルに戻すと機体が回りだしました。 でも、機体が腹を見せるまで反転すると操縦がついていきません。ヘリの対面ホバリングの如く、 鏡の中の姿を見ながら食事するように操作が反対になってしまいます。これは操縦訓練が必要です。(現在は3軸ジャイロができたので容易にできる。)

(7)左向け左の90度クッキンの進路変更
 風上に向かって比較的ゆっくり飛行させ、ラダーを入れると同時に、水平を保つ方向にエルロンを少し当てます。 機体は「クッキン」と90度向きを変えます。瞬間的に総べての舵をニュートラルに戻すと、なんと、 茂木で見た「左向け左」飛行になるではありませんか。 最も、この操作グッドタイミングで、最適な操舵操作が必要で、100発100中でやるには相当訓練がいりそうです。 さもないと、落ち込んだり、バンクしたり、90度方向転換できなかったりします。 茂木では並進してきた2機が、お互いの距離を変える事無く、見事にやってのけていたのです。

(8)サイドスリップ
 変更後の機体で待望のサイドスリップによる直線飛行です。原理を検討すると機体を横に向ける為にはラダーを切ります。 すると切られた方向の主翼が下がるので、それを補うためにエルロンを当て水平を維持します。 そのままの状態を維持し続けると水平旋回に入ってしまい、直進はしません。ではどうすればサイドスリップが可能になるか?

答え
 それは強い横風の中でやるのです。風が垂直尾翼に当たり、テールが風下に押されます。 そのまま直進させるためには自然とサイドスリップの姿勢になります。いやでもサイドスリップになってます。

異議ありですか
 そうです茂木では風もないのに、左右どちらでもサイドスリップを「いとも簡単に」やってのけていました。

では正解を
 いくらラダー当てたにしろ飛行機が水平を保ったまま横方向に飛び続けるは困難でしょう。 右ラダーを当てた状態で機体の水平を保つと右水平旋回に入る事は先に説明しました。 もし、この状態で円を描く外側の翼が上になるように傾けると、更に小さな円を描くようになり、 機体は円の内側に降下してしまいます。今度はエルロンを逆にいれてみます。 すると回転半径は大きくなり今度は円の外側に降下します。 そこでエレベータを少しアップにし降下を防ぎ、なおかつ上昇もしない位置にし、直進飛行になるように調整します。 機体は少し斜め上を向き、更に前方に位置する翼を少し下げ横を向いた「サイドスリップ」飛行にはいります。 それは斜め下方向へ滑り落ちながらの飛行姿勢で浮かせていることになります。ベクトル書いて説明しないと難しいです。

 別の練習方法としては、完全なナイフエッジ飛行状態から機速を落としていくと、30度位の斜め上向きのナイフエッジに入ります。 そのままバランスを取りながら機体を水平近くまで戻していってもサイドスリップの姿勢に入ります。 説明も難しいが操縦も難しく旋回に入りそうになったり、滑り落ちそうになったり、上昇したり、失速したり、 そのままナイフエッジに近くになったりと、慎重な操作が必要です。でも慣れるとホットリンボーでも十分に可能です。 このサイドスリップは高速飛行の時より低速飛行の方がやりやすいです。でもそのまま失速して落ちても知りませんよ。

 ここまでやってみて、やはり中学の理科の本は嘘だ(不十分)と再度納得したのです。もし、正確に揚力の説明をするとすれば、 真空だ、圧力だ、負圧だ、加圧だ、粘性だ、抵抗だ、ベクトルだ、質量だ、対地速度だ、対空速度だ、ベルヌーイだ、カルマンだ、 何だかんだと分厚い本になるだろうな。要するに、本や、ニュースなど簡単に目や耳に入るのは、かなり限られた条件のもとにおける、 極めて一部の現象であり実際は非常に複雑な要素が沢山絡みあっていると云う事です。

3.スタント機の重心を下げる
 ホットリンボーのアクロに気を良くしたところ「スタント機でやってみろ」と、悪友の声が聞こえました。 何事も実証するのが楽しみの私は悪友の誘いに乗る事にしました。スタント機には悪いが、 尾部に釣りの重りを沢山接着しテスト飛行です。 こんな事、皆さんは興味無いと思うので結論は簡単に、MKのキングバードにOS52エンジンを装着した機体 32エンジン設計なので、52でかなり頭重になっているので、後ろに100gを積んだ。 こんな事すると、理由を知らない仲間のサポータが機体を持った瞬間、「重て~」と連発する状態になる。

(1)エルロン舵角能力不足でフラットスピンならず。
(2)ホバリングやテールスライドはいとも簡単です。
(3)でも重くなるので、本気でアクロやりたかったらアクロ機を使いましょう。

で、最適なアクロ機は何かな?と思ったら、ホクセイモデルの「プライマス」が軽快にアクロってるのを見つけた。 家に帰り早速RC雑誌を見ながらこれやってみるかな!スホーイも、エクストラも欲しいし!なんて何気なく言ったら、 後ろから「置く場所ないし、不景気で賞与は3割も減てるのに何言ってるの!!、正月どうするの!!」と天の声が!! 「バッタン」、、、、本を閉じる音。

 なので、フラットスピンにも入らないヒロボーの「ストリーム ハイパー50」の後部に15gの重りを4個も接着しています。 30gでだめだったから60g積めばなんとかかるかな?なんて!!!、今度の休みはこれでテストしてみよう。それでも正面で 完全なフラットにならないかもしれない。そしたらその次は90gで、、、、バッカみたい。 でもやってみました。そしたら案の定、重いのでエンジンの力不足です。そこで外してあったOS91エンジンに改装しました。 今度はエンジンパワーは文句なしです。でも頭がめっぽう重くなりました。で、機体後部のに更に錘を追加したのです。 これでめでたしめでたしのはずでしたが、全体が重くなってしまい着陸が困難です。 特に30度位の角度で下ろしてくるとドスンと着地するようになってしまいました。結論、 エンジンとメカを外し誰か機体使う~となり、引き取り手が現れ嫁に行きました。

追加
 仲間がホクセイモデルのPRIMUS(プライマス)を購入したのでつられて買ってしまった。 この機体でも正面で佳麗なフラットスピンにするには頭が重い。重心移動が必要だな~。電池異動で済むのかな~。 重り追加は極力したくないし、、その後雑誌の広告で「新型はサーボの位置が更に20mm後方に移動した」とあるのを見つけた。 納得、納得。「アクロやりたかったら「最新型」のアクロ機を買いましょう。」

 でも、それでは面白味がないので、次はEZのムスタング90の重心を変えてアクロってみようか!!なんて考えています。 今日は12月としては風も無く暖かい飛行機日和のなに年末の大掃除です。網戸洗いや窓拭きで1日が終わってしまいした。 飛行場の会費の割に行く回数が少なく、1回の飛行に換算するとものすごく高い遊びになってる。 支払いの時期になると「無駄な出費、、、、」と天の声が響く。8本脚のタコじゃないが今度はどの機体売るかな~。

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