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     カラスとの戦い 
1.カラスとトンビの戦い
 杉林から200mほど離れた所にある、我がRCクラブ所有の飛行場の上空を鳶(トンビ)が羽ばたきもせずゆったりと旋回している。 大抵は1羽で悠々と飛行している。ここでトンビが飛んでいる日は何故かぽかぽか陽気の日が多い。 トンビはまったく羽ばたきもせずゆったりと大きく旋回を続けている。 上空から餌でも探しているのか、それとも単に遊泳を楽しんでいるのだろうか? 魚の養殖池の上空で旋回しているトンビは獲物を狙っているのか、首をきょろきょろと振っており、 時たま急降下し両足で大きな魚を捕まえていた。それに比べたら大分悠々とした飛び方である。 飛行場の上を旋回しているトンビは単に上昇気流(サーマル)にのって飛行を楽しんでいるのであろう。

 羽ばたきしないトンビの飛行を見ていると、サーマルグライダーをやってみようと思う。そう思うのは私だけではなさそである。 近くの杉林にいた烏(カラス)の群れから1羽のカラスが上空のトンビのそばまで近ずき、 トンビの真似をしようと羽ばたきを止めて滑空飛行を始めた。 しかし、カラスの悲しさか、ぶざまな飛行になり僅かの距離で高度が下がり、急いで羽ばたきして元の高度に戻ろうと努力している。 しばらく見ていたら林からもう1羽のカラスが飛来し、俺の方が上手に出来るはずと思ったのか仲間に入った。

 カラスが来たのでトンビは僅かに高度を上げ悠々と旋回を続けている。 一方2羽のカラスは一生懸命にトンビの様な飛行をすべく努力しているのだが、残念なことに一向に上達する様子がない。 杉林にはカラスが沢山いたが、このゲームに参加するカラスは他にいないようであった。 ひとしきり2羽のカラスはトンビ流の飛行術をマスターすべく試みたが結局無理のようであった。 カラスは諦めて林に帰るかな??と思ったが意外な行動に出たのである。

 2羽のカラスは何を思ったのか、上空のトンビをめがけて攻撃を仕掛けたのである。 トンビは迷惑そうにヒラリとかわし、少し上空に上がって旋回を続けていた。 カラスの方は目一杯羽ばたきを続け、執拗にトンビを攻撃していくのである。 トンビはうるさそうに数十メートル横に移動するのであるが、それでもカラスは追いかけていく。 暫く様子を見ていたのだが、トンビ1羽にカラス2羽で勝ち目がないのか、トンビはカラスを攻撃する様子はなかった。

 数分間こんな状態が続いたあと、トンビは大きく羽ばたきをつづけ飛行場の上空を離れた。 例のカラスは2機で、いや2羽で追撃体制に入りトンビを追い始めた。 私は行きがかりじょう、何処まで追って行くのか気になり最後まで見ていた。スピードを上げたトンビとカラスは、 100mはおろか500mそして1Kmを超えるだろう、カラスとトンビが点になり見えなくなる位遠方まで追って行ったのである。 見えなくなって暫くしたら先程のカラスが2羽で、意気揚々と引き上げてきたのである。

2.カラスとRC機の戦い
 田植えの時期になるとRC機の飛行場近くに何処からともなく多くのカラスがやって来る。 カラスは15羽前後で飛来する事が多い。都会ではカラスが収集前のゴミ袋を食い散らかすので厄介もの扱いになる。 ここ、田舎では田植えをしたばかりの田んぼを目標に飛来する。

 田植えを終え、人々が隣の田に移動すると直ぐにカラスの集団が舞い下りてくる。 カラスは田植え直後の田の中で虫等を食用としているのであろう、群れが群れを呼び徐々に数を増してくる。 遠くの田にいた農家の人がそれに気がつくと、駆け寄ってカラスを追い払うのである。しかし、 カラスは5~10メートル移動するだけで、なかなか退散しないのである。人とカラスのこん比べが始まる。 農家の人がしつこくカラスを追い払う理由を聞いたところ、次の事を教えてくれた。

 田植え直後の田んぼには筋状に水深の深い所と浅い所があり、苗は浅い所に植えられている。カラスは
苗を食べる訳ではないが、 足が短いので水深の浅い所を選び、特に植えたばかりの苗を踏台にしながら歩きまわる。 水中に倒れた稲は育たなくなってしまうため、踏まれた苗を起こして回るのが大変なのだそうだ。 話しを聞けばもっともである。広い田んぼの中から倒れた苗を探し、起こして回る作業の大変さは素人でも予想がつく。

 その後で農家の人は、「大勢でRC飛行機飛ばしている時はこないので助かる。」 「飛行機でカラスを追い払ってくれないか?」と私に要求した。 休日なら人が多いので、次から次ぎへと離陸する機体があり、上空は常に飛行機やヘリが占拠している。 天気の良い今日を田植日にしたのであろうが、私とて久々の晴天のため会社を休んで遊びに来た関係で、あいにく仲間がおらず一人である。 ここのRCクラブは「地元民優先」「地元民に協力」することを徹底している手前、それではと飛行機で追い払う事を試みた。

 カラスは15羽位で田んぼの中を我が物で顔で歩き回っている。「じゃー戦闘開始するか。」てな調子でエンジン始動した。 エンジンがかかってもカラスは逃げそうにない。飛行機を離陸させたが、カラスはチラっと滑走路を振り向いただけである。 トンビの例ではないが1機位上空にいても恐くないのだろう、相変わらず植たばかりの苗を踏み付け歩きまわってる。 なんとなくカラスに馬鹿にされたような気がした私は、本格的にカラスの追い出し作戦を展開する事にした。

 真珠湾ではないが奇襲作戦である。田んぼに人がいない事を確認してから遠方でUターンさせた飛行機を、 1メートル位の超低空にし、遠方よりカラスの群れる田んぼめがけ突入させたのである。カラスは一斉に舞い上がった「やったぞー」。 さらにUターンを繰り返し、舞い上がったカラスの群れを蹴散らし杉林の方へ追いやったのである。 見せしめのために杉林の前で「もう来るな」と威嚇飛行を続け、カラスがおとなしくなったので意気揚々と引き上げたのである。

 飛行機が着陸してもカラスは杉の機の上にとまりこちらを見ているだけである。もちろん、私もカラスを監視している。 2分、4分、6分、様子を見ていたカラスの中から1羽が杉林から出てきた。 一端は隣の田んぼに降り立ちはしたものの、少しづつ田植えの終わった田んぼに寄ってくる。 2羽、3羽と徐々に数を増し10分しないうちに元の状態に戻ってしまった。どうしよう!!

 1度位ではだめかと思い再度離陸する。今度は離陸と同時に皆さんお引き上げになった。効き目はあったようだ。 飛行機が制空権を取った事を誇示するようにループ(宙返り)やロール(横転)をし、強さを表現して意気揚々着陸した。 「何だ、何だ、!!」カラスは飛行機が着陸ると同時に、今度はいきなり田植えの終わった田んぼに戻ったのである。 カラスの学習能力は高いと聞いていたがこれほどとは思わなかった。「ちきしょうー」

 こうなったらこっちにも意地がある。又もや離陸するとカラスは一斉に杉林に待避した。 パイロットはトンビを追い払ったカラスの例の如く、徹底的に遠方まで追い払う作戦に転じた。 つまり、杉林の上のカラスを更に遠方に追い込んでしまえば良いのである。飛行機は杉林のカラスめがけて攻撃を始めた。 杉林の上をカラスを探しながらに行ったり来たりして、徐々に遠方まで追っていったのである。 遠方になるほどカラスと飛行機の距離の見定めが難しくなる。

 本日の戦果、「敵方無傷、当方大破1」となった。あまり深追いしすぎて、距離の目測を誤り飛行機は杉の木に激突してしまった。 今、カラスは「カー」「カー」と(笑いながら)私の眼の前の田んぼの中を悠々と歩き回っている。 私は背中を丸めて壊れた機体から受信機やサーボを取り外している。これは会社をずる休みしたことによる「罰」かもしれない。 それよりも、帰宅した時、妻や子にばれる事がなお恐い。何と言われるか解かってる。うまく隠しとうせるかな~。憂鬱だな~。

 PS:
 言い訳は何時の時代も難しいよね。先日我がRCクラブの仲間の新年会があった。 そこで、今年はハンドランチグライダー大会を開催する事になり、皆同じ機種(2万円位)でやる事になった。 幹事がグライダーの持ち合わせの無い人の注文をとりまとめて購入する事になった。 何だかんだで10人が購入する事になったが、誰が注文し何処に届けるかの段になったら、皆さん自分の家は嫌だと言い出した。 金払いを心配しての話ではない。何のことはない、みんな家族気にして入るのだな~と一安心。 結局、言い出しぺのグライダーの先生の家にまとめて送る事になった。 どうせ皆は「グライダーの先生が同じのを買えと言ったから、、」と家族に話すのだろうな!私みたいに。 なんせグライダーの先生は高校の先生だから、先生の言う事は聞かなくちゃならないんだから。

 言い訳は幾つになっても苦労する。子供みたいに「あいつが持ってるから」とか「仲間はずれになるから」とか、 「だれだれに貸した」とか「私だけ持ってないので」とか何時も苦労してる。 言い訳方法も進歩させたいのだけど、妙案が無くて子供の時から使いなれた言葉が出てしまう。

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