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     若本と年寄り
 「不十分な知識でラジコン飛行機やヘリを飛ばすと危険です。」 なんて言うのは「年寄りの戯言(たわごと)だよ。」と、ご意見がありました。 まさに、そのとうりです。別に反論はしません。 飛行機の発明者のライト兄弟だって、最初は無知だったはずだ。色々経験し、 失敗する事から多くを学び取り、飛行に成功したはずです。 違うのは当時は安全に飛行する飛行機がなかったからそうしただけで、もし、 安全な旅客機があったら、自分で作る気なるのか聞いてみたい。

 現在でも、苦労して自作の実機を作り乗っている方が沢山いるから、やはり、 ライト兄弟が今いたら自分で作ったかもしれない。同じ事はラジコンの飛行機にも言えることで、 ほぼ完成状態に近い組み立てキットや、完成機が沢山発売されているのに、 板やロッドを切り刻んで作る人もいる。どんなに安全でも完成品を購入したのでは、 満足しない性格の方が沢山いると思う。空中分解しようが、宙返りで主翼が折れようが、 自分で作った物が空を飛んだ事の方が感激が大きいのは私も同じ。 未経験者でも買ったその日から何のトラブルも無く、自由自在に飛ばせたとしたら面白みは少なく、 趣味としての遊びはすぐに飽きるだろう。

 何かをやりたいと思った時に、その道の達人がいて、懇切丁寧に指導してくれれば、 何のトラブルやミスもなく、いともたやすく、成功してしまうでしょう。 言ってみればパズルを解く道筋を案内してもらうようなもので、面白くもない。 世界に先駆けて日産の車他に採用された無段変速機の開発に従事した方は、 そんな意味で幸せであったと思う。成功したからマスコミで評価されているが、 完成できなかったとしても(失敗とは言わないのだ)たぶん幸せだったのではないだろうか? 完成できなかった時、マスコミは失敗と言う言葉を使うが、技術屋は何故問題が起きたか、 その解決策はどうするかと考える。つまり、失敗しないための技術を研究する種が増しただけなのである。

 若いうちは経験が無いのは当たり前である。従って経験によるプロファイルを持ち合わせていないから、 物事の進む先を読む力がないのも当然である。ラジコン航空機の事例では理解しにくいので、 身近にあるバイクの例で説明しよう。私にも若い時期はあった。中学3年生の時、 当時はエンジンの付いた原動機付自転車、スクータ、オートバイに非常に興味があった。 しかし、私たち中学生にオートバイの乗り方を教えてくれる方などいるはずも無い。 それでもどうしても乗りたかった。最初はタイヤをゴムローラで駆動する原付自転車を、 放課後に親友と二人でこっそり乗り回した。次は親友が親父に無断で乗って来た125ccのスクータだ。

 スクータは原付に比べると素晴らしい乗り心地で加速時は体が置いていかれる。 いい気になって走り込み3Km行った所で停止した。ここでUターンして帰るべく、車体を傾けUターン開始、 グリップを軽くひねったのだが力強く加速する。何だ!!傾けていたスクータが「自然に起き上がってくる」 ではないか。ブレーキかける間もなく、道幅より大きな弧を描いてスクータに座ったまま、 1m下の石垣の側溝にすっぽり落ち込んでしまった。でも大した怪我はなかった。 両手と頭に包帯を巻かれていたせいか、母や親父に怒られた記憶はない。でも、 姉には「乗り方も教わらず馬鹿じゃないの!」と言われたことが記憶に残ってる。

 それから次の週、うまい具合に整備待ちのキックのついた250ccのオートバイが、 乗って下さいとばかりに友人の家に置いてあった。早速わくわくして、 そこの友人と2人で道に引っ張り出した。キックすると力強いエンジン音でかかった。 クラッチを握り、ギヤーを入れ、ゆっくりと離してクラッチミートである。 本来ならここでスーと走り出すはずである。しかし、 クラッチが合うのと同時にエンストしてしまうのである。

 クラッチはゆっくり離せば良いと思うので慎重にやるのであるが、 何度やっても走り出す前にエンストしてしまうのである。 250ccだから相当な力があるはずである。友人と2人で挑戦したのだが何度やっても同じ結果になってしまう。 どうしても走り出さないので諦め一息ついた時、友人が「おじさんが走り出すときの音はもっと大きな!」 と一言漏らした。そうだな、あんなに勢い良く走るのだから、 キット何かが違うのだろうと言うことになった。そこで、 エンジン音を大きくなるよう回転を上げてクラッチミートに挑戦した。 バイクは動きだしそうになったが結局エンストした。なら、 もう少しエンジンを回した状態でクラッチミートしてみようとやったところ、 クラッチが接触しだすと回転が下がる事に気がついた。「そうか!クラッチを離すのと、 グリップをひねるのを同時にやる必要があるのだ。」と理解するのに30分以上は費やしたろう。

 そんなこんなで何とかバイクを扱えるようになった頃、他の友達が野球しているところに乗りつけた。 当然、全員が寄ってきた。そのうちの一人が「乗せろ」となり走り方を聞いて勢いよく走り出した。 数分もすれば戻って来ると皆思っていたが、一向に戻ってこない。 どうしたんだろうと「ぞろぞろ」と全員でバイクが走って行った道を進みだした。 100mほど先にあるカーブの先の畑の中にバイクは倒れていた。カーブを曲がれず突っ込んだのだ。 でも、友はいなかった。どこにいるのか大声で呼んだところ、畑の先20mほど先から声が聞こえた。 友は畑の先の崖から川の中に落ちて、崖を必死に這い上がるとこだった。 怪我も無くずぶぬれになっただけで済んだのは幸いだった。泥だらけの服で帰ると親にバレルと言って、 学生服を川で洗って乾燥させてから家に帰ったのである。

 こんな話は他にもある。走り出し方を聞いて走りだしたやつがいたが、 帰って来たときに遠方からスピードを落とし、両足をつきながらそろそろ来るので訳を聴いたら、 「停め方が解らない、踏み切りで止まれなっかでー。」足を地面に擦り付けて止まるまでに、 何十メートルも行き過ぎてとまったそうだ。笑い話ではない、これは本当の話なのです。 教えたのは私ではない。私なら止め方も教えます。それから、狭い庭に仲間といた時に、一人の友人が、 他の友人にバイクの乗り方を教えていた。彼は、「クラッチを離す前に、同時にクリップをぐいと捻るのだ」 と「極意」を教えていた。バイクにまたがった友人はそのとうり実行したのでエンストすることなく、 勢い良くスタートしてしまった。バイクは前輪を浮かしぎみに数メートル直進し、 生垣に突っ込んで止まったのである。生垣で良かったよ、ほんとに。 顔にすり傷と手足の怪我程度で済んだから。

 もし、当時バイクの熟練者で、技術も、人間も出来た人がアドバイスしてくれれば、私も、 友も危険な目に会わずに済んだろうに、と思うのである。これは無理な相談かな。もっとも、 現在でも中学生がバイクに乗りたい、と言っても「そうか教えてあげよう」と言う人はいないだろう。 よほどバイク好きの親なら、自分の子供に小さいうちから訓練してくれるけど。 そう言う私の娘も16歳の時に50ccに乗りたいと言い出した。怪我されたくはないので、 舗装、砂地、砂利道、ガレバ、川原、林道、山の尾根、海岸と、色々な所に引き回して慣れさせた。 親父と一緒なので安心しているのか、結構楽しんでいた。おかげで無事故のまま無事結婚してくれた。

 ところが、高校生の息子のやつは私に内緒で、私の通勤バイクを友達に貸したのである。 翌日返されたバイクは見られた物ではない。大きな擦り傷はあるは、側面カバーは剥がれ変形するわ、 ミラーは破損するはで惨憺たるものだった。「乗り手は?」の質問に対し、 「お父さんのフルフェイスヘルメットと、グローブも貸したから大丈夫だったよ。」との事で一安心した。 大事なヘルメットは使い物にならない状態になったが、息子を叱らなかった。 私も若い時無性に乗りたかったので気持ちは理解できたし、私が怪我した時、私の親も怒らなかった。 怒らなくも本人は十分勉強になったはずだと、私も思ったからである。その後、息子は暫くおとなしかった。

 この息子19歳の時に、若者に人気のアメ車、ローダウンに改造のトーラスワゴンにほれ込んだ。 週刊誌みたいな本の宣伝を頼りに購入すると言う。成人祝いとして50万くれ、他に180万貸してくれ、 残りはアルバイトで貯めた40万の計270万円だそうな。そんな車、ロクな物ではないから、 国産の新車にしろと言っても聞かないのである。各種の事例を引き出して忠告しても、 「何でも反対する」とむくれる始末である。 私も若い時、古いバイク、ビンセントブラックシャドウやインデアンに憧れたのと同じなのだろう。 半分は失敗すると覚悟して返済を確約させ金を渡した。息子は一日かけ湘南の中古車屋に買いに行き、 乗って帰ってきたのは深夜になった。初めての左ハンドルでなれない首都高速を走行する。 無事帰宅できるか、妻と胃の痛くなる思いで帰宅を待った。 妻は一緒に行って車見てやれば良かったのに、と言ったが、行っても、 車に「けち」をつける事になるのは分かりきっていたので行かなかった。

 息子はその車に誇らしげに乗り込み、家族で車をバックに記念写真も撮り、 颯爽と成人式に向かったのです。きっと、友達にアメ車を自慢したかったのです。 でも、数日して落ち着いてくるに従い、車の欠点に気がついたようです。 途中に穴のあいたいエキゾーストパイプ、片方が動かないワイパー、壊れたウインドウオッシャポンプ、 ちょっとこすったただけで「バリバリ剥がれる」でたらめ塗装、出っ放しのアンテナ、 選局もままならないラジオ、トルエン臭い室内、あげたらきりが無い。 息子がこの車に乗ったのは10回位である。3ヶ月したころ売ってくるといって持って行った。その後、 息子は外車の経験者と言うことで、友達から外車購入の電話相談が来るようになった。そんな時に、 「車は日本車に限る」と言っているのが、隣の部屋から聞こえてくるのである。 この変わりようはたった半年である。150万円の勉強代は高くついたが、 良い社会勉強になったと思う。でもそれまでの間、息子は燃えていたし、 一度でもアメ車に係わったことで満足し、タイプの異なる人にも会い色々勉強になったと思う。 だからこそ、息子は少し成長したのだろう。

 ラジコンに燃えている貴方も、部外者から見れば、非常に危険な遊びをしている人に違いない。 こんな無駄な遊びを継続するためには、部外者から嫌われたり、飛行禁止運動がおきない様に、 安全とマナーを守ることが必要なのだ。と言っても若い貴方に理解できないだろうな。 それにラジコンやりたいと思った時、近くに指導できる人がおらず、費用や場所の面で、 やむなく独学に入る状況も理解できるのである。他人に迷惑かけたり、怪我せぬ様にと祈るだけだ。

​トーラスワゴン

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ビンセントブラックシャドウ

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​インデイアン

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